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自分らしさってアメージング!#13 おじぃちゃん達の絵画教室への入会
編入学試験を受けよう!
そう思った次の日、
僕は家から1時間かかる都内の片隅にひっそりとある小さな絵画教室を見つけ、
そこのドアをノックしていました。
薄暗く、変な匂いのする教室に入ると、
おじぃちゃんやおばぁちゃんが大きなキャンバスを立てて、
油絵具で風景画を描いています。
キャンバスとキャンバスの間からは、
病院の話やどこのスーパーが安いとか、そんな言葉が飛び交っていて。
僕はその言葉に当たらないよう避けながら、
頭を低くして奥にいるオーナーの出で立ちをした女性に話しかけました。
「あの〜、デッサン教えてほしいんですけど…。」
そのオーナーは柔らかい笑顔で
「もちろん、いいですよ」と答えてくれました。
「試験が、二ヶ月後にあるんです。
大学入試のデッサン。」
オーナーはその笑顔を崩さずに、
頑張ってみましょうか。と
言ってくれ、ドキドキしていた鼓動も少し落ち着く。
するとひとりの大きな男性が小走りに僕らのところへ来て
「受験用のデッサン??
経験は?
予備校は行ってた?
何回目の受験???」
その男性は少し顔をゆがめて僕に訊ねてきました。
僕は自分の今の状況と未経験であることを恐る恐る言葉少なめに答えます。
その男性はさらに顔をゆがめて、
何か考えていました。
「ここは見ての通り美大受験用の予備校ではないからね。
合格の保証はできないけど、デッサンを教えることはできる。
それでもいい?」
「はい…」
僕はこの男性に何を言われても
「はい」と答えただろう。
だってそれ以外選択肢はなかったから。
「がんばってくださいね」
オーナーは変わらない笑顔で言ってくれました。
僕は次の日から、
この教室に通い始めることになります。
受験まで残り二ヶ月…。