実技1はデッサンの試験。 この傾いている机は何? 席に着いて目の前にあったものは、ドラマで見た事のある建築家が設計図を描くような斜めの机。 普段、水平な机の上で描いている僕にとって、一つ目の難関を突きつけられました。 僕は奮い立っていた心に少しかすり傷を負ったのを感じながら、 カバンからトンボの鉛筆数本とプラスチック消しゴムを出しました。 隣の人を横目で見ると、 小型のプラスチックケースにそれはそ […]
実技1はデッサンの試験。 この傾いている机は何? 席に着いて目の前にあったものは、ドラマで見た事のある建築家が設計図を描くような斜めの机。 普段、水平な机の上で描いている僕にとって、一つ目の難関を突きつけられました。 僕は奮い立っていた心に少しかすり傷を負ったのを感じながら、 カバンからトンボの鉛筆数本とプラスチック消しゴムを出しました。 隣の人を横目で見ると、 小型のプラスチックケースにそれはそ […]
20歳にして初めての本気受験。 高校、大学と真っ向勝負の受験はせずに、 推薦入試という内申点と小論文・面接で高校に入り、 統一試験という附属高校専用の試験で大学へ進学してきた僕にとって、 大学入学後、この歳にして初めて自らこの勝負に出るとは思ってもいませんでした。 受験日当日、僕は中学の美術の時間に使っていた絵の具セットを久々に出して鞄にいれました。 また、デッサンに使う3本のトンボ鉛筆を鉛筆削り […]
「大学替えたいんだけど。」 夕飯を食べてリビングでくつろいでいる父に、 出来るだけ自然にいつもの口調で話しかけました。 さすがに驚いてはいたが、特に反対する気配もなく了承を得ることができました。 大学を辞めるのではないし、入学費は自分で払うし、 元々子供の頃からなんでも好きな事を自由にさせてくれていた父だったので、 その頃と同じ感じで大学編入の承認はおりた。 何はともあれ受かったらの話^^; 「現 […]
絵画教室では主に静物のデッサンを教えてもらいました。 例えば水の入った花瓶やレンガ、球体…。 僕はとにかく描いた。 絵が得意で小学生の頃は褒められ、真似されることが当たり前だった。 でもここでは違った。 ひとつひとつの箇所で 注意、指摘、ダメ出し。 いや、アドバイスを受けました。 正直、絵への自信すら無くなりそうになったけれど、 確かにその通り描いてみると、 よくなる。 描いて、 修正、 描いて、 […]
編入学試験を受けよう! そう思った次の日、 僕は家から1時間かかる都内の片隅にひっそりとある小さな絵画教室を見つけ、 そこのドアをノックしていました。 薄暗く、変な匂いのする教室に入ると、 おじぃちゃんやおばぁちゃんが大きなキャンバスを立てて、 油絵具で風景画を描いています。 キャンバスとキャンバスの間からは、 病院の話やどこのスーパーが安いとか、そんな言葉が飛び交っていて。 僕はその言葉に当たら […]
夏休みが終わる頃には、 デザインやアートの専門学校の ナビーゲーターになれるんじゃないかと思うくらい、 多くの学校を知り特徴を把握していました。 まるで旅行のパンフレットを見て、旅行に行った気分になってしまうような。 そんな感じだったのかもしれません。 何もやってないのに、 何かやり遂げた気になっていたりして。 二学期が始まり、 久々の友達とも顔を合わす。 その中にいたひとりの友人と学食でお昼を食 […]
9月から入れる専門学校もあるし、 もちろん来年の春からでもいい。 まずは大学を辞めよう! 学校案内が届いてから 僕の頭の中はすでに専門学校に通っているイメージが出来上がり、 テープが擦り切れる程、繰り返し夢描いていました。 なんて楽しそうな学校ばかりなんだ! 自分は一年間ダラダラと文句を言いながら時間を投げ捨てていたよう。 バイトもろくにせず、 両親の4本の脛を両手で鷲掴みにして噛り付いていただけ […]
数カ所で実施している美術系大学の編入試験を知ったものの、 調べていくうちに合格者の絵のレベルの高さに愕然とし、 レベルの違いに落胆した翌日、気が付けば僕はまた本屋に足を運んでいました。 何かまだあるはずだ。 まだ自分が知らないだけだ。 とにかく今の窮屈で退屈な世界をなんとしてでも出たかったのと、 夢中になるものを見つけたかった。 その時、あるデザイン雑誌の広告に、 デザイン専門学校が掲載されていま […]
それから僕は絵の楽しさにはまりました。 共働きの両親のもと、 ひとりの時間も多く、 お店の片隅で、 いつも夢中でチラシの裏や紙に絵を描いていた子ども時代を 再現するように、この頃は「描く」という行為自体が、 面白く懐かしく新鮮でした。 あの頃をふと思い出しながら、 僕は目に入るものを描き、 その日感じた事を描き、 頭の中で、 夢の中で、 描いて描いて描き続けました。 それからまた大学の夏休みが終わ […]
今思えばイラストの教室に入ったメリットは、 色々な画材を使えた事が大きかった。 それ以外は 好きに絵を描いている。 構図があーだこーだとかの いわゆる絵の基礎を習うでもなく、 とにかく好きに描いていく場所でした。 その時に、僕はパステルという画材と出会います。 小学生の頃から絵の具は図工で使ってきたけれど、ずっと筆に対して不満をもっていました。 手と紙の間に筆が入ることで、 頭のイメージを表現でき […]
教科書の落書きをほめられ、 頭に焼き付けられた銀座のギャラリーの絵、 次第に僕の心はなんとなく絵の世界が気になりはじめ、 毎日の中でその世界を覗き込む事が増えてきていました。 その証拠に教科書の表紙に描いていた落書きをやめ、 手帳のメモ部分に描くようになっていた。 時間を見つけては本屋へ通い、 画集を手にとることが増え、 美術館に行ってはその雰囲気や絵をからだ全身で感じて 楽しんでいました。 そん […]
中学から漠然と持っていた夢、 ミュージシャン。 それを叶える時間も必要で入った大学だったけれど、 在学中はメンバーも固定せず、月1回都内のライブハウスに出る程度。 作詞作曲は続けていて、 たくさんの曲たちがうまれていたけれど、 それよりも早く時間の方がどんどん逃げていった。 世の中はすでに夏休み。 バイトを細々やって、彼女とデートする日々が定着。 もちろんこれはこれで楽しかったし楽だった。 そんな […]
大学に入って二度目の春を迎えました。 一年過ごしてみて、 残りの三年がテレビの天気予報よりも高い確率で予報可能に。 「一年を通して曇り空でしょう。 時折、日差しが見えることもありますが、 それはあなたの力ではありません。 今のままでは快晴はありえません・・・」 新しい講義のテキストは 僕にとってまた真っさらなキャンバスを与えられたのと同じでした。 相変わらず落書きをして、 授業の後は友達とカラオケ […]
「これ受けてみない?」 その日、大学の学食で友人が突然資料を見せてきました。 それを見ると日大芸術学部の編入学入試の募集要項。 同じ大学で学部が違うだけなのに、優先的な転部というものではなく一般として試験を受けないといけないらしく。 「こんなの無理でしょ。」と、 僕はすぐにその資料を友人へ返しました。 そもそもこの学部は高校の入試面接で2人の面接官、そして高校時代の先生たちに 「かなり特殊で難しい […]
小さな商店街の小さなお店に生まれた僕は、 共働きの両親と祖父母に囲まれ大切に育てられました。 毎日、家族の働く背中を見ながら、 住み込みの職人さんも交えて仕事場で食事をして、 半径50M範囲のたくさんの商店・個店のおじさんおばさんたちにも「ゆーちゃん、ゆーちゃん」と可愛がられ、 どの店へ行けばどのおやつがもらえるかも、子どもながらに分かっていたくらいです。 店の繁忙期や商店街のイベント時には、 大 […]